初めての【成瀬巳喜男】監督映画〜メロドラマの源流の楽しみ方・超解説!

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館理人
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成瀬巳喜男…昔の監督の名前だよねえ…なんとなく聞いたことあるけど観たことないなあ…って方!成瀬映画はメロドラマです!

館理人
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昼ドラ的メロドラマの源流はここにあります!って聞くと、どうです?ぐっと親近感湧きません?

館理人
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成瀬巳喜男映画は、けっこう動画配信サービスで見られるんですよね〜

館理人
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てことで、ざざっと解説です!

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成瀬巳喜男の映画とは?

(轟夕起夫)

 かの監督たち、ジャン=リュック・ゴダール、レオス・カラックス、ウォン・カーウァイなど、鬼才たちにもリスペクトされている成瀬巳喜男。

 果たして、その作風とはどんなものなのか?

ド直球のメロドラマ

 例えば、愛する夫の命を交通事故で奪った青年への憎しみが、いつしか激しい愛へと転じていくヒロインの物語(『乱れ雲』)。

 はたまた、夫の戦死後、残された酒屋を切り盛りするも、義弟に恋慕され、心がよろめいてゆくヒロインの物語(『乱れる』)。


 成瀬巳喜男の(中期から後期の)映画はド直球のメロドラマだ。なんつうか、「そ、そんなご無体なあ〜」と叫びたくなる展開ばかり。しかし驚異的なのは、ドロドロとした人間模様であっても、ものすごいテクで詩情豊かな世界にしてしまうところ。

ヒロインはスター女優

 成瀬は、ワケありの「女性映画」を量産した。そこでは田中絹代、原節子、高峰秀子、司葉子といった日本映画史上に残るアクトレスたちの崇高な輝きを見ることができる。

 つまりは、男と女のあいだに醸成される濃密な空気感を鮮やかに切り取ってみせるその筆致。波瀾万丈な昼ドラや韓流ドラマの源流に位置しつつも、成瀬映画はもっと深くメロー(mellow=なめらかで甘美)なドラマであるのだ。

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監督・成瀬巳喜男とは

世界が認めた偉大な才能

 成瀬巳喜男(なるせ・みきお)。

 1905年、巳年生まれなので巳喜男と名づけられた。

 最初は松竹蒲田撮影所に小道具係として入り、おっとりとした性格ゆえか、なかなか監督に上がれず、昇進後もよくスランプになった。移籍話が持ち上がったときは、時の城戸四郎撮影所長からは「小津安二郎はふたりいらない」と言われ、引き止められず、落ち込みながらPCL(現・東宝)へ。
1930年に『チャンバラ夫婦』で監督デビュー。その後無声映画で高い評価を得る。
急病で倒れた千葉泰樹の代役、林芙美子原作ものの第一作『めし』(1951年)で新境地を開拓。

 さらに『浮雲』は小津も「俺にはできないシャシン」と激賞した傑作に。

 ほかに『おかあさん』『晩菊』『妻』『女の歴史』など多数。

 海外では黒澤明、小津安二郎、溝口健二に続く日本の“第四の巨匠”として有名。男と女のやるせない関係を描き、やるせなきお・・・・・・と呼ばれていた。

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ここが成瀬風!〜映画ピックアップ

『浮雲』(1955年)

恋する女性を描く確かな手腕

妻子ある男(森雅之)と戦時中インドシナで恋仲になったヒロイン(高峰秀子)が、戦後も自堕落な男との関係をずるずると続けてゆく。『山の音』(義父へのかなわぬ思い)、『娘・妻・母』(医者と若き恋人との間で板挟み)などでもお馴染みの道ならぬ恋は、成瀬映画の定番といえる。そして奮闘するヒロイン像は『放浪記』のような女の一代記を形作る。

『娘・妻・母』(1960年)

愛と金に翻弄される男女

『めし』『夫婦』『妻』の倦怠期真っ直中の夫婦もの三部作(子供が生まれていないのがキーだ!)をはじめ、大から小までさまざまな形態のホームドラマに巻き起こる波紋を好んで描いた成瀬。夫の生命保険金100万円を手にしたため、兄や妹にたかられる『娘・妻・母』の出戻り娘(原節子)のように、示談金、手切れ金など、橋田壽賀子もビックリな「金にまつわるネタ」も多い。

『乱れ雲』

ドロドロ+純愛のミックス!

成瀬の遺作は──交通事故が招き寄せる未亡人(司葉子)と加害者(加山雄三)との数奇な出会い。この韓流ドラマばりの交通事故ネタは、『娘・妻・母』や『女の歴史』(1963年)、『ひき逃げ』(1966年)などでも(設定上)使われ、サイレント時代の『腰弁頑張れ』(1931年)でも電車事故として登場している。これ、成瀬が父親を、交通事故で亡くした過去が影を落としているのだとか。

『放浪記』(1962年)

原作は林芙美子の自伝的小説。行商人の娘が貧困の中、必死に生き文壇に上がるまでを活写。

『山の音』(1954年)

原作は川端康成。息子夫婦と暮らす老父の、若くて美しい“義理の娘”への複雑な感情を綴る。

『流れる』(1956年)

東京の下町の芸者置屋を舞台に、花柳界に生きる女たちの悲喜劇を淡々と描写。原作は幸田文。

『女が階段を上る時』(1960年)

夫を失い、高級バーで働く雇われマダムと、華やかな夜の銀座に蠢く人々の虚実を浮き彫りに。

『女の中にいる他人』(1966年)

被害者から加害者に変貌する女。エドワード・アタイヤのミステリーを翻案した心理サスペンス。

『めし』(1951年)

周囲の反対を押し切って結婚したものの、いまや倦怠期に突入の夫婦。ふたりの行き着く先とは?

『乱れる』(1964年)

夫に先立たれ、嫁ぎ先にて義理の弟に思いを告白されたヒロイン。微妙に揺れ動く女心を凝視。

轟

ぴあ2005年3月10日号掲載記事を改訂!