『タンジェリン』(2015年)はiphone5sで撮ったことが話題となりました。
レビューをどうぞ!
「マーベルなどのコミック物は絶対にやらない」と公言する、ディーズ界の気鋭ショーン・ベイカー監督作
2015年のサンダンス映画祭で初披露、完成度の高さが話題を集め、ゴッサム・インディペンデント映画賞で観客賞・助演女優賞に。
さらにサンフランシスコ映画批評家協会賞ほか数々の映画賞で受賞。
監督のショーン・ベイカーが次回作、ウィレム・デフォーと組んだ『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は35mmフィルムで撮っている。
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は、安モーテルで暮らす母子を描きます。
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「ストリートから生まれた物語とその画期的な撮影スタイルに感銘を受けた」
そう絶賛したのは園子温監督。
園子温監督については、監督作『愛のむきだし』のレビューで紹介してます。
いや、彼だけではない。本作『タンジェリン』を讃える映画人やクリエイターは数え切れない。
中にはあの『マッドマックス』シリーズのジョージ・ミラー先生も! これでいわゆる「お行儀の良い作品ではない」ことがわかるだろう。
ジョージ・ミラー監督『マッドマックス』シリーズは、近未来のモーターバトルアクション。
クリスマスイブを迎えたロサンゼルスの街。一角にはトランスジェンダーのコミュニティがある。そこのお騒がせ娼婦シン・ディは、ポン引きで売人のダメ男とデキており、彼の身代わりで2週間服役に。
彼女は出所した日に、親友アレクサンドラから聞く。自分の留守中、男が浮気していた事実を。
ドーなるかは火を見るよりも明らか。ブチ切れたシン・ディは、浮気相手を見つけ出そうと街中を奔走する。
全編速射砲のごとき言葉の洪水、スラングたっぷりのキワどい会話が画面を埋め尽くし、しかも生々しくも尖った笑いが端々を包み込む。喧騒に満ち、猥雑だが、温々しい人間賛歌になっている。
監督は1971年生まれ、長編5作目となるインディーズ界の気鋭ショーン・ベイカー。
「マーベルなどのコミック物は絶対にやらない」と公言し、これまでも自国のアウトサイダーやマイノリティをテーマにしてきた、筋金入りの硬派なフィルムメイカーだ。
主演している二人もリサーチ中に出会ったトランスジェンダーで、演技未経験ながら大胆にもキャスティング、彼女たちと交わした会話からヒントを得、アレンジしてフィクションへと落とし込んだ。
ところで、園監督の言った「画期的な撮影スタイル」とは? スマホですべてを賄っているのだ。しかしお手軽な自主映画ではない。3台のiPhone5sに、シネスコで撮ることを可能とするレンズを装着、音響にもこだわり、ハイクオリティを獲得!
その撮影スタイルは、我らを街の特別な物語の“目撃者”に変える。
週刊SPA!2017年8月15、22日号掲載記事を改訂!