『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006年)は、監督:アレクサンドル・アジャ、出演:アーロン・スタンフォード、他
「リメイクはこうすべし」と突き付ける、鑑のような作品
『エルム街の悪夢』や『スクリーム』などで知られるホラーマスター、ウェス・クレイヴン監督が1977年(日本公開は1984年)に発表したカルト映画『サランドラ』のリメイク。
『サランドラ』は旅行者が殺人鬼に襲われるホラー!
本作を手がけたのは、『ハイテンション』の手腕を買われ、ウェス・クレイヴンにより抜擢されたアレクサンドル・アジャ監督。これがハリウッド・デビュー作となる。
『ハイテンション』は山奥で巻き起こるスプラッター・スリラー!
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すでに承知のことかもしれないが、日本では一時“封印作品”になりかけた映画である。
登場する人食いミュータントが、アメリカ政府による“核実験の被爆者”との設定だったため、「もしかしてタブーに触れているのでは?」と映画会社が自粛的にオクラ入りさせていたのだ。
しかし、海外で絶賛されていた本作は配給会社を替え、無事国内でも公開された(レイトショーだったが)。
映画はホラーファンを中心に好評価を得た。トラブルは起きなかった。当たり前だが、何事も世に問うてみないと真価は分からないのである。
かつての政府の核実験場、ニューメキシコの荒野で、食人一家に襲われる家族の受難劇。
オリジナル版の『サランドラ』(ちなみにこのタイトルは和製)をリスペクトし、ディテールや展開は本家を忠実になぞっている。が、オープニングは決定的に違う。
冒頭、本物の核実験フィルムや奇形児たちの映像が流れる。付随してミュータント家族の特殊メイクもリアルになり、オリジナルより“犠牲者”として強調されている。
アメリカを象徴する2つのファミリーを出会わせ、凄まじい対決を描きだしたアレクサンドル・アジャ監督はフランス人ゆえ、残酷描写も容赦なく「アメリカ批判」を画にしていく。
しかもサバイバル・スリラーとしてジョン・ブアマンの傑作『脱出』を目指していたというから志しが高い。
『脱出』はバート・レイノルズ、ジョン・ボイドが脱出劇を演じます!
内外の映画人に「リメイクはこうすべし」と突き付ける、鑑のような作品。
我ら『ゴジラ』を生んだ国の住人ならば、このエンタメ性と問題意識はきっと共有できるはずだ。
週刊SPA!2008年5月13日号掲載記事を改訂!