読む映画リバイバル『マイ・バック・ページ』

轟夕起夫が号泣したそれぞれの『マイ・バック・ページ』

(2011年春号より)

 告白すれば、見た後にボロ泣き……しかも恥ずかしながら、作った人たちの目の前で!

 いきさつはこうだ。試写室を出ると、山下敦弘監督と脚本の向井康介の両氏が来ていた。一言挨拶し、感想を述べようと思った。そうしたらグググと込みあげてきて、止められず、もうダメだった。何とも締まりのない姿を見せちまったものだが仕方ない。それが筆者なりの、そのときの率直な“挨拶”であった。 “読む映画リバイバル『マイ・バック・ページ』” の続きを読む

ネットで読めます!『ツィゴイネルワイゼン』書かせていただきました。

ネットサイト、シネマトゥデイの名画プレイバックで、『ツィゴイネルワイゼン』について書かせていただきました。

ネットで読めます。よろしければぜひ!

リンクはこちら→生と死、現実と夢幻を彷徨う故・鈴木清順の謎かけ怪奇映画『ツィゴイネルワイゼン』

読む映画リバイバル『私の悲しみ』

轟夕起夫の注目する次の才能『私の悲しみ』を観よ

(2012年6月号より)

 今、彼ほど、日本のオルタナティブなシンガーソングライターたちとのつながりが深い監督もいないのではないか。堀内博志。74年生まれで、劇場デビュー作は、昨年公開された『加地等がいた−−僕の歌を聴いとくれ−−』。どんな内容かといえば、大阪でそれなりに人気を博していたガレージバンドのボーカリストから一転、01年、フォークシンガーになり、37歳で上京するも世間的にはブレイクすることなく40歳で急逝した加地等の、苦悩と泥酔と無頼の2年半を生々しく捉えたドキュメンタリー映画だ。 “読む映画リバイバル『私の悲しみ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『のんちゃんのり弁当』

「頑張れアラサー女子」映画かと思いきや、随所に職人芸が光る“絶品料理”だった

(2010年2月16日号より)

 美人を逆境に置くと映画が面白くなる——という定理を証明した本作。“のんちゃん”とは主演の小西真奈美のことではない。彼女は永井小巻、31歳。ダメ亭主(岡田義徳)に愛想を尽かし、幼稚園児のひとり娘(←こっちが、のんちゃん)を連れて、実家に戻ってくる。

 実に、単刀直入な導入部だ。

 小巻は東京・下町生まれ。快活で、ポジティブ。さっそく自立しようと仕事を探すのだが、しかーし。これまでなんにも考えずに生きてきた彼女は空回りしてばかり。そりゃあそうだ。甘い。甘すぎるのである! “読む映画リバイバル『のんちゃんのり弁当』” の続きを読む

読む映画リバイバル『空気人形』

“代用品”ではない人生を求めた人形に共感するか、はたまたペ・ドゥナの裸に興奮するか

(2010年3月30日号より)

 この映画ってある種、“踏み絵”みたいな使い方ができると思う。というのも、観終えてからの感想によって、その人の現在の「幸福度」がざっくり、測れてしまうのだ。

 さて、どんな物語か? 荒唐無稽なお話である。主人公はラブドール。安物の性欲処理人形が突如“心”を授かって、持ち主(板尾創路)に隠れて家を抜け出すという展開。そしてさまざまな人々に出会い、レンタルビデオ店で働く青年(ARATA)に空気人形は恋をしてしまう——。 “読む映画リバイバル『空気人形』” の続きを読む

読む映画リバイバル『タリウム少女の毒殺日記』

これもひとつの、ヒトゲノム妄想日記

(2013年7月下旬号より)

【6月×日】

 渋谷アップリンクで土屋豊監督の「タリウム少女の毒殺日記」を観た。05年、劇薬物であるタリウムを密かに実の母親に投与し、ブログにその観察記録を書いていた女子高生−−−−をモチーフにした映画だ。もっと正確に言えば、タイトルも謳っている通り、そこからタリウム少女なる架空の主人公を抽出、「踊ってみた」「演奏してみた」といったネットでお馴染みの投稿動画さながらに、「母親に毒薬を飲ませてみた」彼女の行為がスクリーンにアップロードされていくのであった。 “読む映画リバイバル『タリウム少女の毒殺日記』” の続きを読む

読む映画リバイバル『太陽の傷』

三池崇史、哀川翔よりもバイオレンスなのは、少年法に守られた殺人犯である

(2007年1月23日号より)

 早くも話題沸騰、三池崇史監督の07年の新作『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(秋公開)。豪華キャストで全編英語ゼリフ、奇想天外、源氏vs平家のバトルを描く西部劇だとか。天下の鬼才ならではの賑々しさだが、さて昨年、三池作品にしては意外にも、ひっそりと劇場公開された映画があった。それがこの『太陽の傷』である。主役は哀川翔アニキ。 “読む映画リバイバル『太陽の傷』” の続きを読む

読む映画リバイバル『ハッピーアワー』

“週末ヒロイン”の濃密な時間の連なり

(2016年1月上旬号より)

映画が幕を閉じて、カラダに微熱を感じながらこう思った。「オレは5時間17分何を観ていたのだろう」と。これは否定的な意味で言っているのではない。むしろ心地良かった。時おり心が毛羽立ったり、シーンによってはささくれだったりして、感情のさざなみが起きたのだが、軸の部分はすっかり映画に身をゆだねて、どっしりと、落ちついて白日夢を見せてもらったのだ。 “読む映画リバイバル『ハッピーアワー』” の続きを読む

読む映画リバイバル『パンドラの匣』

実に眼福! 色香を無意識に競っている(!?)仲里依紗と川上未映子の演技に首ったけ

(2010年8月10日号より)

 仲里依紗vs.川上未映子。こんなナイスなカードの対決が、映画の中で行われていたのをご存知か。タイトルは『パンドラの匣』。ちょうど昨年、生誕百年を迎えた太宰治の小説が原作だ。戦後すぐ、山中の結核療養所が舞台になっているのだが、これが何ともノホホンと奇妙に明るいトーンの物語で、太宰文学を語る上では異色の作とされている。 “読む映画リバイバル『パンドラの匣』” の続きを読む

読む映画リバイバル『接吻』

不敵な笑みを浮かべ、奇行を繰り返す女優・小池栄子、天晴である

(2009年3月3日号より)

 皆さんは、小池栄子という名前を耳にして何を思い浮かべるだろうか? 巨乳の元グラビアアイドル。総合格闘家・坂田亘の奥さん。バラエティやトーク番組などで仕切りのうまい、頭の回転が速いタレント……ふむふむ。どれも納得の答え。

 だが、 “読む映画リバイバル『接吻』” の続きを読む

読む映画リバイバル『純喫茶磯辺』

イタくも愛すべきダメ人間が集う喫茶店……架空であっても、思い出に残る名店だ

(2009年2月17日号より)

 もし、自分の身の周りに本当にいたら、「イタすぎるキャラクター」でしかないのに、映画の中では「愛すべきダメジン」に見えてしまう不思議。本作『純喫茶磯辺』に登場するのは、まさにそんな人々ばかり。さっそく紹介しよう。まずは宮迫博之が演じる “読む映画リバイバル『純喫茶磯辺』” の続きを読む

読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』

主人公は、植木等の当たり役“無責任男”のUSA版。でも内容は、実に硬派だった

(2007年9月18日号より)

 どこの世界にも“弁の立つヤツ”はいる。本作の主人公の肩書きは、タバコ研究アカデミー広報部長。すなわちタバコ業界のスポークスマンで、その巧みな話術、ディベート術で世間をスイスイスーダラダッタと泳いでいく(アーロン・エッカート、好演!)。まるで植木等の当たり役、“無責任男”のUSA版みたいだが、 “読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』” の続きを読む

読む映画リバイバル『許されざる者』(監督:李相日)

「業」を背負った“ダークナイト”がここに誕生

(2013年9月下旬号より)

「許されざる者」に挑んだひとつの道理

 観終わって、何とも釈然としない気持ちになった。砂を噛むがごとき、苦々しい感触が胸の奥に広がった。いや、無論それは、オリジナル版の時でもそうだったのだ。あの第65回米アカデミー賞にて作品賞をはじめ4部門に輝いた監督、主演クリント・イーストウッドの代表作(の一本)。はたまた、法や正義を楯にとり、無闇に力を行使することの欺瞞を描き続けるイーストウッドの真骨頂。「許されざる者」(92)とは観る者に爽快感など与えず、しかしその禍々しさのためにいつまでも心の中に沈殿し続ける、異形の映画だ。 “読む映画リバイバル『許されざる者』(監督:李相日)” の続きを読む

読む映画リバイバル『妄想少女オタク系』

恋をした相手が腐女子だったら……? 萌えながら楽しむラブコメの新しいカタチ

(2008年4月22日号より)

 こういう青春ドラマの主人公が登場しても、何らフシギではない時代である。すなわち、“攻め”の反対語とは何か? と質問されて、本作のヒロインは平然とこう答えるのだ。「“受け”でしょ」と。“守り”ではなくて“受け”。BL(ボーイズラブ)において、 “読む映画リバイバル『妄想少女オタク系』” の続きを読む

読む映画リバイバル/淡島千景と『もず』

動から静へ、静から動へ

(2012年5月下旬号より)

 映画が始まると、(松山崇による)何ともデコラティブな内装の小料理屋のセットが目に飛び込んでくる。住み込み女中・岡田すが子役の淡島千景はやがて、暖簾をくぐって晴れやかな顔で、右手から登場する。さて、店の手伝いでも始めるのかと思いきや、そうではなく、スタタタタと二階に上がってしまう。意表を突く展開(アクション)。それがこの映画「もず」(61)での彼女の行動様式だ。 “読む映画リバイバル/淡島千景と『もず』” の続きを読む

読む映画リバイバル『こっぴどい猫』

「好き」という暴力的な感情

(2012年8月下旬号より)

 映画が始まると眼前にはいきなり、「モト冬樹生誕60周年記念映画」と出る。その仰々しさがちょっとオカしみを醸し出す。誰が言ったか「日本のニコラス・ケイジ」。そもそもはバンドマンであり、長年、バラエティでもハっちゃけてきた彼の顔が勝手に脳内にオーバーラップしてきやがる。が、いざ画面に登場するや否や、「これはマジだな」と姿勢を正すことに。何とも渋い味わい。 “読む映画リバイバル『こっぴどい猫』” の続きを読む

『変態だ』のみうらじゅんさん&安斎肇さんのインタビュー記事、dmenu映画で!

今週末から公開の映画『変態だ』の原作・みうらじゅんさん&監督・安斎肇さんのインタビュー記事、dmenu映画にアップされています! 記事はこちらからどうぞ。

 

読む映画リバイバル『キッズ・リターン』

(1996年10月下旬号より)

 エドワード・ヤン監督待望の新作『麻蔣』が、『カップルズ』というタイトルで公開されるという。さまざまな関係の二人組が物語を進行していくことからこのタイトルがつけられたそうだが、ならば我らが北野武監督の『キッズ・リターン』もまた、“カップルズ”の織りなす映画として眺めることが可能だろう。 “読む映画リバイバル『キッズ・リターン』” の続きを読む

読む映画リバイバル〈『仁義なき戦い』シリーズは邦画史に残る男たちの群像劇〉

(2000年11月号より)

 暴力と抗争。裏切りと報復。『仁義なき戦い』シリーズといえば、即座にそんなイメージが浮かびあがってくるだろう。

 まあ、たしかにそれはそうなのだ。’73年に公開されるや大ヒットを記録。’74年にかけて連打されたシリーズ5作は、戦後の広島やくざ抗争をリアルに描いたものだった。 “読む映画リバイバル〈『仁義なき戦い』シリーズは邦画史に残る男たちの群像劇〉” の続きを読む