キネマ旬報で『怒り』『永い言い訳』について書いてます

キネマ旬報7月下旬号、特集「キネマ旬報が選ぶみんなが観たい、いい映画55」の中で、『怒り』『永い言い訳』について短評を書いてます

読む映画リバイバル『(本)噂のストリッパー』

再検!日活ロマンポルノ

今年でケンちゃん37歳 いまも現役の俳優です

(1998年5月号より)

 たった1本の映画が――人生を思いも寄らぬ方向へと導いてしまうことがある。それは観客サイドだけでなく、もちろん製作者サイドにも起こりうる不測の事態だ。例えば『(本)噂のストリッパー』というこのロマンポルノ。かつて名子役として人気を博したひとりの俳優にとって、これはまさしく“運命の映画”なのであった。

 まだ〈チャイドル〉なんて言葉のなかった60年代。映画にTVに活躍し、7才のときから始まった主演作『ケンちゃん』シリーズでその俳優、宮脇康之はお茶の間のアイドルとなった。絶大なる人気ぶりといったらもう、ほぼ同年代の俺から見ても当時羨望のマトであった。シリーズの舞台が寿司屋、ケーキ屋、おもちゃ屋に、レストラン、そば屋、フルーツパーラーと毎回変わっていくのもステキで、
「カアチャン、なんで俺を“宮脇康之”に産んでくれなかったァ!」
 と恨めしく呟いたもんだが、さすがにシリーズ最新作『フルーツケンちゃん』の頃などは観ているはずもなく、
「まだやってんだ、ケンちゃん……」
 と、同情とねぎらいの気持ち。76年のことで、すでに15才になっていた。

『(本)噂のストリッパー』は堀越学園卒業後に、そんな宮脇康之が“脱=ケンちゃん”を目指して出演したロマンポルノである。監督には劇場デビューしたばかりの気鋭の森田芳光。イメージチェンジを図るには申し分のない企画だった。事実、映画の出来は良かったのだ。彼が演じてみせたのは、ストリッパー(岡本かおり)に片思いする純朴なアルバイト学生。別の女性を抱いて心の隙間を埋めていたのだが、そのストリッパーがマナ板ショーを始めたと知り、相手役に立候補。念願のセックスへと突入するものの向こうにとってはただのお仕事! 夢に生きる男の痛いところをクールに刺激する作品だ。

 宮脇康之、20才のときの大勝負。で、彼の自伝『名子役の虚構 ケンちゃんの真実』を繙いてみると、
「――略――よし、これが呼び水となって、再び仕事が入るようになるか。それとも芸能界から見放されることになるか。どっちか一つに賭けてみよう――略――」

 結果は見事に後者だった。作品にも彼にも罪はなかった。つまり、世の偏見に押しつぶされたのだ。

 それにしてもこの自伝、スゴイ内容です。帯からして
「芸能界史上最高の名子役の誰も知らなかった悲痛な舞台裏、ケンちゃんのイメージを守るためだけに、両親が離婚、兄が自殺未遂をしても、僕たちは最良の家族を演じ続けた…」

 チャイドル、必読の書である。

[ビデオボーイ掲載]
●監督:森田芳光●出演:岡本かおり、太田あや子、宮脇康之、他●1982年●日本

読む映画リバイバル『生贄夫人』

再検!日活ロマンポルノ

役所広司、黒木瞳主演によるもう一つの『失楽園』を夢想する

(1997年8月号より)

 久木祥一郎と松原凛子。
 この二人の名にピンときたアナタは『失楽園』ブームの一端を担ってきた方なのだろう。原作を読んだか、はたまた映画版を観たか。それぞれの家屋を犠牲にし、真実の愛とやらに殉じていく男と女。映画ではシンシンと雪が降りしきる中、役所広司と黒木瞳扮する〈祥一郎と凛子〉の、その道行きを貫徹するラストがまた、とりわけ深い余韻を残していた。

 それはそれでいいのだ。そんな風に美しく人生を諦められたら実に悦ばしいことではあろう。本当に。

 ところがここに、心中をしたにもかかわらず、そうは簡単には美しく死なせてもらえなかったカップルが存在する。『生贄夫人』の東てる美と影山英俊扮する若きカップルだ。

 山中に、仲よく並んで仮死状態にあった二人。それまでさんざんヒロインの谷ナオミを責めまくっていた、サディスト男に見つかったのが運のつきだった。女のほうは死姦されて息を吹き返し、廃屋に連れていかれ、のちに男がそこに自力で辿りつく。

 谷ナオミはサディスト男に訊ねる。
「やっかいなお荷物を背負い込んだものね。なぜ助けたりしたの?」「妬ましかった……」「妬ましい?」「顔がね、笑ってたんですよ。幸せそうにね。まるでもう、自分たちの愛を信じきっているといった顔で……」「死人に嫉妬するなんて……あなたらしいわ」

 そうして縛られ泣きじゃくる女に、谷ナオミが駄目押しでこう云う。
「どうして死んでしまわなかったの。……これから生き恥をさらすことになるというのに……」

 男がハッと目を覚ますと、自らは柱に括りつけられ、そこには縄化粧の恋人が、例のサディスト男に浣腸を一発お見舞いされるところであった。「 ウッー」という呻き越えとともに恋人の目の前で失禁する女。

 ホント、死んでおけば良かった。

 それにしてもドリフのコントではないが、もしも祥一郎と凛子の心中現場に、このサディスト男が現れていたなら――雪の上の浣腸――。

 それもまた、もうひとつの失楽園と呼ぶべき光景かもしれない。

[ビエオボーイ掲載]
●監督:小沼勝●出演:谷ナオミ、東てる美、坂本長利、他●1974年●日本

ガールズ&パンツァーWalkerで、『ガルパン劇場版』の映画評書いてます

発売中の雑誌、ガールズ&パンツァーWalkerで、『ガールズ&パンツァー 劇場版』の映画評書いてます

キネマ旬報NEXTvol.10で『セトウツミ』の映画評書いてます

発売中の雑誌、キネマ旬報NEXTvol.10で、映画『セトウツミ』(主演:池松壮亮、菅田将暉、監督:大森立嗣)の映画評書いてます。

読む映画リバイバル『大人のオモチャ ダッチワイフ・レポート』

再検!日活ロマンポルノ

1975年産のオトナのための映画のおもちゃ

(2000年10月号より)

 人形にとり憑かれた男がいる。

 といっても、いっこく堂のことではない。医師だ。この『大人のおもちゃ ダッチワイフ・レポート』に登場する、北極調査隊の担当医(益富信孝)のことだ。 “読む映画リバイバル『大人のオモチャ ダッチワイフ・レポート』” の続きを読む

『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督&音楽・安川午朗氏のトークイベント、ポッドキャストで配信中

モデレータを務めたイベント「Meet the Filmaker」にて、『日本で一番悪い奴ら』白石監督&音楽を担当した安川午朗さんが、映画の舞台裏や見どころについて語ったポッドキャストがApple storeにて配信中です

読む映画リバイバル『花芯の刺青 熟れた壷』

再検!日活ロマンポルノ

キェシロフスキ・コレクション開催中に緊急紹介

(2003年5月号より)

 日本の、そして日活ロマンポルノの“キェシロフスキ”といえば小沼勝だ。
なぬ!? Who is キェシロフスキ? “読む映画リバイバル『花芯の刺青 熟れた壷』” の続きを読む

読む映画リバイバル『女校生偽日記』

再検!日活ロマンポルノ

「偽」日記にあのコとヤったと書いておこう

(1998年2月号より)

 先日、庵野秀明監督の『ラブ&ポップ』を観てきた。そう、村上龍原作の、あの『エヴァ〜』の庵野監督初の実写映画。 “読む映画リバイバル『女校生偽日記』” の続きを読む

読む映画リバイバル『エクスペンダブルズ2』

アクション映画の未踏の地へ

(2012年11月下旬号より)

 一見ドリームキャスト、実はいささか時代遅れな、肉弾アクションのアイコンたちを集めた「エクスペンダブルズ」(2010年)。タイトルどおりに、監督、脚本、主演のシルヴェスター・スタローンは自ら“消耗品”と名付けた傭兵部隊の捨て石的闘いを見せ、自虐というか、自分で自分のことを笑ってみせちゃう、 “読む映画リバイバル『エクスペンダブルズ2』” の続きを読む

QJ (クイック・ジャパン)で新作『セトウツミ』 『日本で一番悪い奴ら』 『ヤング・アダルト・ニューヨーク』の映画紹介が掲載されてます

月刊誌QJ (クイック・ジャパン)vol.126で
新作映画
『セトウツミ』
『日本で一番悪い奴ら』
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
の映画紹介、書いてます。

「月刊スカパー!」で「ミッキー吉野&タケカワユキヒデ」インタビューやってます

雑誌「月刊スカパー!」7月号で
「ミッキー吉野&タケカワユキヒデ」インタビュー記事が掲載されています。

読む映画リバイバル『時には娼婦のように』

再検!日活ロマンポルノ

越美晴(コシミハル)の美少女ぶりにも感嘆!

(1999年7月号より)

 日本の歌謡曲に「過去」という言葉が(歌詞として)初めて登場したのは1964年。菅原洋一のヒット曲『知りたくないの』だそうだ。しかし本当なのか? “読む映画リバイバル『時には娼婦のように』” の続きを読む

読む映画リバイバル〈日活ロマンポルノ論〉人生の愉しみは日活ロマンポルノ『白い指の戯れ』にあり

人生の愉しみは日活ロマンポルノ『白い指の戯れ』にあり

(2012年4月号より)

 この世には2種類の人間がいる。すなわち日活ロマンポルノを観たことがある者と、そうでない者と。どちらが“人生の愉しみ”を知っているのかといえば、「そりゃあ述べるまでもないでショ!」と、ここは大いにアジっておこう。

 にしてもなぜ今、また、日活ロマンポルノなのか。 “読む映画リバイバル〈日活ロマンポルノ論〉人生の愉しみは日活ロマンポルノ『白い指の戯れ』にあり” の続きを読む

読む映画リバイバル『団地妻・昼下りの情事』

再検!日活ロマンポルノ

日活ロマンポルノ生誕30周年は、来年なのダ

(2001年1月号より)

 トンネルを抜けると、そこは断崖だった。男と女は、車の中で裸になっていた。 “読む映画リバイバル『団地妻・昼下りの情事』” の続きを読む

読む映画リバイバル『暴行!』

再検!日活ロマンポルノ

優作の歌は、アルバム『まつりうた』に収録

(2002年6月号より)

 ラジオが好きだ。はっきり言ってテレビよりも。はるか昔、あの野田秀樹がラジオ番組を持っていたとき、「お耳の恋人、野田秀樹です」という名フレーズを発していたものだが、まさにラジオとはお耳の恋人。 “読む映画リバイバル『暴行!』” の続きを読む

読む映画リバイバル『女囚101 しゃぶる』

再検!日活ロマンポルノ

女だらけの水泳大会と女囚映画、最近ないネ

(2000年1月号より)

 女囚映画は娯楽の宝庫だ。 “読む映画リバイバル『女囚101 しゃぶる』” の続きを読む

読む映画リバイバル『あそばれる女』

再検!日活ロマンポルノ

この映画自体も不条理な展開がビックリです

(2000年4月号より)

 世の中というものが不条理な、「何でそーなるの?」的な出来事の連続であることは今さら言うまでもない。が、それにしても最近、「腹が減ったので鼻の穴に浣腸した」式の、一段と理解不可能な事件が多くなった。 “読む映画リバイバル『あそばれる女』” の続きを読む