読む映画リバイバル『セッション』

才能を食い合う「モンスター映画」

(2015年5月上旬号より)

 この映画を観たあとは感情が高ぶって、ハイテンションのまま、しばらくはバディ・リッチ師匠の神技ナンバーばかり聴いていた。ジャズ史のみならず、ドラマー史上の神々のひとり。その驚異のドラミング、超高速シングルストロークは味わえば味わうほど虜に。「もっと、もっと!」とカラダが欲しがる始末である。なかでも、56歳のときにリリースした名盤〈THE ROAR OF ’74〉が最高だ。パワフルなドラムにアグレッシブなブラスセクション。これぞビッグバンドスタイルの醍醐味で、 “読む映画リバイバル『セッション』” の続きを読む

読む映画リバイバル『アメリカン・スナイパー』

イーストウッドとスローモーション

(2015年4月上旬号より)

「マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや」

クリント・イーストウッドが監督した「アメリカン・スナイパー」は、観終わって寺山修司のかの有名な短歌を思い起こさせる。英雄と称えられた狙撃兵クリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)の生涯を通して、国と個人と戦争の関係を改めて描いたイーストウッドの意図は明白だ。 “読む映画リバイバル『アメリカン・スナイパー』” の続きを読む

読む映画リバイバイル『その土曜日、7時58分』

安っぽい犯罪劇を重厚に描く……これが名匠シドニー・ルメットの手腕なり!

(2009年7月7日号より)

 安い犯罪。安い人間たちが起こしちまった激安な犯罪。今回ご紹介する映画『その土曜日、7時58分』を端的にまとめればこうなるわけだが、ここで強調すべきは作品自体は全く「安くはない」ということ。むしろ重厚。しかも一度観始めたら、最後まで心を持っていかれてしまうはず。なぜそうなるのか。 “読む映画リバイバイル『その土曜日、7時58分』” の続きを読む

読む映画リバイバル『アメリカン・ティーン』

高校生のリアルに迫るドキュメント……のはずが、ドキュメントっぽくないのはなぜ?

(2009年3月17日号より)

 近年、映画やTVドラマはリアリティを求め、その方法論としてよくドキュメンタリー・タッチを導入する。ナマっぽい映像と臨場感あふれる編集の合わせワザ。これは簡単そうで、作り手のセンスが如実に出てしまう手法なわけだが、逆の発想もまたあり。 “読む映画リバイバル『アメリカン・ティーン』” の続きを読む

読む映画リバイバイル『インフェルノ』

アルジェントの「怖がらせるためには何でもあり」演出満載の支離滅裂ホラー

(2007年10月2日号より)

 絶妙のタイミングでの初DVD化である。イタリアン・ホラーの鬼才にして重鎮ダリオ・アルジェントが’80年に発表した『インフェルノ』。“魔女三部作”の第2弾に当たり、1作目はあの『サスペリア』(’77年)。完結編はお待ちかね、今年、時を経て登場の『Mother of Tears』(娘のアーシア・アルジェント主演!)。本国では来たる10月31日に公開、先のトロント国際映画祭にてプレミア上映された! “読む映画リバイバイル『インフェルノ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『敬愛なるベートーヴェン』

傲慢で粗野でお下劣、でも楽聖……。浮かび上がるベートーヴェン

(2007年11月13日号より)

 こりゃまた大胆なアイディアを採用したものである。孤高の天才音楽家べートーヴェン(名優エド・ハリス)の晩年に突如登場した若き女性。その名はアンナ(扮するダイアン・クルーガーがエロい!)。彼女はコピスト(写譜師)として雇われる。折しも、 “読む映画リバイバル『敬愛なるベートーヴェン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『トゥモロー・ワールド』

驚異の長回し&絶妙な音楽使いが抜群。邦題のイマイチさが嘆かれる傑作だ

(2007年3月20日号より)

 元ジャーナリストで今は隠遁家、ヒッピー崩れの長老(マイケル・ケイン)が愛聴していたのはストーンズのカバー、イタリアの鬼才フランコ・バッティアートによる「ルビー・チューズデイ」である。

 一体、だしぬけに何だ!? と思われるかもしれないが、すでに本作を観た方ならこれだけで脳内プロジェクターが動きだすはず。 “読む映画リバイバル『トゥモロー・ワールド』” の続きを読む

読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』

主人公は、植木等の当たり役“無責任男”のUSA版。でも内容は、実に硬派だった

(2007年9月18日号より)

 どこの世界にも“弁の立つヤツ”はいる。本作の主人公の肩書きは、タバコ研究アカデミー広報部長。すなわちタバコ業界のスポークスマンで、その巧みな話術、ディベート術で世間をスイスイスーダラダッタと泳いでいく(アーロン・エッカート、好演!)。まるで植木等の当たり役、“無責任男”のUSA版みたいだが、 “読む映画リバイバル『サンキュー・スモーキング』” の続きを読む

読む映画リバイバル『リトル・ミス・サンシャイン』

ポンコツの黄色いフォルクスワーゲンは本当の家族の“ありよう”を代弁する

(2007年6月5日号より)

 インディーズ作品としては異例の全米スマッシュヒットを記録、先のアカデミー賞でも4部門にノミネートされ、惜しくも作品賞は逃したものの、脚本賞と助演男優賞を獲得したロードムービーだ。

 まず何がいいって、 “読む映画リバイバル『リトル・ミス・サンシャイン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『キンキーブーツ』

脚と靴による官能イメージ、痛快なまでの人生逆転劇が“フィット”したドタバタ劇

(2007年2月20日号発売)

 脚と靴との関係は、どこかエロティックだ。つまり、凸と凹との遭遇をイメージさせるがゆえに。あのシンデレラの物語だって、性的隠喩が含まれているのは明白だろう。

 で、直訳すれば“倒錯的な、変態ブーツ”なんてタイトルを持つこの『キンキーブーツ』。隠喩どころかダイレクトに、“脚と靴の性的イメージ”を活用した映画になっているわけだが、 “読む映画リバイバル『キンキーブーツ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『テキサス・チェーンソー ビギニング』

殺人鬼レザーフェイスよりも強烈! リー・アーメイの軍曹ぶりは健在だ

(2007年4月3日発売号より)

 初めてトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(’74年)と出会ったときのことは忘れられない。’80年代初頭、渋谷の雑居ビルの一室の有料ビデオ上映(輸入版)で観たのだが、秘密集会のごとき雰囲気と作品の異様さが合わさり、したたかノックアウトされたものだった。 “読む映画リバイバル『テキサス・チェーンソー ビギニング』” の続きを読む

読む映画リバイバル『ラブリーボーン』

殺された少女の「無念と後悔と怒り」に同化し、ピージャクのイマジネーションも奔放に暴れ回る

(2010年7月13日発売号より)

 ピージャクこと、ピーター・ジャクソン監督の久々の新作ということもあって、期待が大きかったのだろう。『ラブリーボーン』は公開時、賛否が真っ二つに分かれた映画だった。 “読む映画リバイバル『ラブリーボーン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『イルカの日』

喋るイルカの名アクターぶりに感心。この可愛さはズルい! ズルい!

(2009年6月23日号より)

 のどかだ。何とも、のどかなのだ。『イルカの日』。といえば、人間の言葉を話すようになったイルカが「大統領暗殺計画に利用される」という、ジャンル的には一応“SFサスペンス”に分けられている一品であり、DVD化を筋金入りの映画ファンが長年待ち望んでいた往年の名作である。 “読む映画リバイバル『イルカの日』” の続きを読む

読む映画リバイバル『フェノミナン』

天才的能力を授けられた男から眺めた世界

(1997年1月下旬号より)

 「フェノミナン」とは、哲学用語のひとつで“現象”という意味。もとは自然科学の分野で使われはじめた言葉らしく、ニュートンの著作の中にも見つけることができるそうだ。

 さて、そんなタイトルにたがわず、舞台となる平和な田舎町には、さまざまな“現象”が起こってゆく。 “読む映画リバイバル『フェノミナン』” の続きを読む

読む映画リバイバル『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』

男女の熱愛の先にある“絶望的な空虚さ”……船の映画では描きようもないシビアな現実

(2009年6月9日号より)

 レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが『タイタニック』以来11年ぶりに共演!

 というわけで、この『レボリューショナリー・ロード』は、『タイタニック』をデートで観た世代、さらには付き合いを深め、結婚にまで至ったようなカップルたちにお薦めする。

 ただし、 “読む映画リバイバル『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』” の続きを読む

読む映画リバイバル『ディディエ』

フランス人の好きなサッカー、犬、シャバを組み合わせた映画

(1998年5月上旬号より)

 タイトルの“ディディエ”とは、ペットのラブラドール犬に付けられた名前である。

 だがそれは、途中から人間の呼び名になる。なぜか? その犬が突如、人間の姿に変わってしまうからだ。不条理? そう、まさしくカフカの『変身』のごとく。 “読む映画リバイバル『ディディエ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『デート・ウィズ・ドリュー』

ドリューLOVE!な男が悪戦苦闘。“何も持たざる者”のサクセス物語

(2007年6月19日号より)

 あの女優ドリュー・バリモアに無謀にもデートを挑んだ男のドキュメント映画。昨年末の公開時、けっこう話題になったので“結果”まで知っている方も多かろう。 “読む映画リバイバル『デート・ウィズ・ドリュー』” の続きを読む

読む映画リバイバル『スネーク・フライト』

ジャンボジェットを占領した毒ヘビに、サミュエルの「マザファッカ!」が炸裂!

(2009年5月号より)

 邦題は『スネーク・フライト』だが、より分かりやすいタイトルにするなら、「サミュエル・L・ジャクソンvs毒ヘビ(数千匹)」がいい。闘いの舞台となるのはジャンボジェットの機内。なぜにそこに大量のヘビが!?  “読む映画リバイバル『スネーク・フライト』” の続きを読む

読む映画リバイバル『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』

(2000年3月下旬号)

 このところ進むべき道を見失い、なにか足踏みしているような映画ばかり撮っていたヴィム・ヴェンダース。だが“停滞”も旅の一要素である。「日」が昇りさえすればいつかは新たな地平へと「立」つことができる。 “読む映画リバイバル『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』” の続きを読む

読む映画リバイバル『WILD HOGS 団塊ボーイズ』

人生に行き詰まった中年男は『イージー・ライダー』の夢を見るか?

(2008年7月8日号より)

 男なら、一度くらいはハーレーダビッドソンに憧れたことがあるだろう。そのキッカケの多くは、『イージー・ライダー』という映画の影響ではないか。“武骨な鉄馬”に跨がり、腕時計を捨て、爆音と共に旅立っていった主人公たち。ハーレーは、ワイルドに風を切って走る若者の“自由の象徴”でもあった。

 あれから37年後。人生に行き詰った中年男4人組が、 “読む映画リバイバル『WILD HOGS 団塊ボーイズ』” の続きを読む