読む映画リバイバル『カリフォルニア・ドールズ』

轟夕起夫はシアターN渋谷のラストムービー『カリフォルニア・ドールズ』と相対する

(2012年10月号より)

 すでに報じられていることであるが、シアターN渋谷という映画館が閉館する。来たる12月2日をもって。05年12月3日オープンだから最後まで務めあげると、ちょうど7年稼働したことになる。エクストリームなホラー映画を筆頭にカルトムービーのメッカであったが、ドキュメンタリー(特に音楽系)にも強く、はたまた、『ホテル・ルワンダ』のような硬派作から「新藤兼人監督特集」まで、雑多でクセありまくりのプログラムを組む映画館として確固たるポジションを有していた……だけに、正直とても残念だ(当館のHPには全上映リストが掲載されている。圧巻のラインナップを眺めてみてほしい)。

 で、そのラストムービーなのだが、これがまた凄い。ロバート・アルドリッチ監督の遺作『カリフォルニア・ドールズ』(81)である。しかも“ニュープリント版”を焼いての上映。一言で記せば、巡業という名の“ドサ回り”を続けている女子プロレスラーの物語だ。名優ピーター・フォーク演ずるマネージャーに仕切られて、“カリフォルニア・ドールズ”の2人は旅をし、ファイトマネーを求めて肉弾戦に身を捧げる(日本人レスラー、ミミ萩原とジャンボ掘のタッグとの戦いも!)。本作は音楽著作権上の理由によって日本では未だDVD化されていない。一応説明しておくと、ロバート・アルドリッチ(1918〜1983)といえば、『攻撃』『何がジェーンに起こったか』『ふるえて眠れ』『飛べ!フェニックス』『特攻大作戦』『北国の帝王』『ロンゲスト・ヤード』『合衆国最後の日』など、数々の“男泣き”映画で知られる名匠だ。ちなみに『合衆国最後の日』も11月3日より上映、シアターN渋谷最後のモーニングショーを飾る。

 当館が開館する7年の間に、渋谷のみならず、映画館、ミニシアターを取り巻く環境は激変した。映画業界にはデジタル化の波が押し寄せ、去る9月12日にはフジフィルムが35ミリの生産中止を発表した。各地の再開発計画が進む中で、浅草にある映画館5館すべてが10月21日に閉館。そして、名画座の砦、銀座シネパトスまでもが来年3月には改修され、消えてしまうという。

 筆者は今、かつて、大塚名画座(87年に閉館)の最後の上映作に『北国の帝王』(と、二本立てのもう1本は失念)が入っていたことを思い出している。やっぱりラストムービーはアルドリッチなのか!

 おんぼろキャディラックでの“ロードムービー”でもある『カリフォルニア・ドールズ』。マネージャーはカーラジオでいつもオペラを聴いている。『パリアッチ』。レオンカヴァッロが1892年に作曲したイタリアの歌劇で、旅回り一座の人生の哀感を描いたものだが、ピーター・フォークは言う。「俺たちと同じだ。どんなに辛くても悲しくても、旅を続けなきゃならないんだ。次の町へとね」。

 旅は続く。そう、次の町へと。このご時世に“ニュープリント版”を焼くという行為の意味(メッセージ)を噛みしめつつ、アルドリッチの不屈の闘志溢れる映画、シアターN渋谷という映画館と、対峙してみたい。

[ケトル掲載]
●監督:ロバート・アルドリッチ●出演:ピーター・フォーク、他●1981年●アメリカ