読む映画リバイバイル『インフェルノ』

アルジェントの「怖がらせるためには何でもあり」演出満載の支離滅裂ホラー

(2007年10月2日号より)

 絶妙のタイミングでの初DVD化である。イタリアン・ホラーの鬼才にして重鎮ダリオ・アルジェントが’80年に発表した『インフェルノ』。“魔女三部作”の第2弾に当たり、1作目はあの『サスペリア』(’77年)。完結編はお待ちかね、今年、時を経て登場の『Mother of Tears』(娘のアーシア・アルジェント主演!)。本国では来たる10月31日に公開、先のトロント国際映画祭にてプレミア上映された!

 というわけで、再び注目を集めることとなった『インフェルノ』だが、そのアウトラインは古書『三母神』と失踪した作者をめぐり、ローマとニューヨークで連続怪奇殺人が起こる、とでも書けばよいか。実際にはアルジェント作品らしく「怖がらせるためには何でもあり」な演出満載で物語は支離滅裂。だが、水没した地下室にヒロインが飛び込み、腐乱死体が浮かんでくる冒頭から人工的に作り込まれた幻想世界が展開。本作は論理では測れないお伽噺なのだ。

 ショックシーンも豊富で、切断される首、眼球くりぬきなどは序の口、大量のドブ鼠に襲われた老人が近所のホットドック屋のオヤジに助けられるかと思いきや、なぜか包丁でトドメを刺される場面はナンセンスを極めて衝撃的だ。古いゴシック建築に照明の妙……ディテールに凝った素晴らしきハッタリズムと、夢魔を再現するシュールレアリスム的魅力が同居した映画。公開時のポスターには「このショックは目で、耳で、心臓で感じて下さい!」とのコピーが躍ったが、大らかなハートで楽しみつつ、完結編の日本公開を待とう。

※ ※ ※ ※ ※

ニューヨークに住む女流詩人・ローズは、『三母神』という古書を読み、自分の住むアパートが魔女のために建てられたものではないかと疑い、単身調査を始めるが……。アルジェント映画の音楽といえばゴブリンだが、本作ではキース・エマーソンのシンセ音楽が神経を逆撫でし、不安を煽る。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ダリオ・アルジェント●出演:アイリーン・ミラクル、他●1980年●アメリカ