1970年代のオカルト映画ブームが生んだ異形の怪作カルトホラー。大和田伸也の鬼気迫る形相!『犬神の悪霊』

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Photo by Ed Leszczynskl on Unsplash
館理人
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『犬神の悪霊』(1977年)は監督:伊藤俊也、出演:大和田伸也、泉じゅん、他。

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レビューをどうぞ!

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迫害され惨殺されてしまう一家の怨念…ディープな封印作品

各地に伝わる犬神憑き、そして日本的な共同体の恐怖に肉薄した土着ホラー。

『帰ってきたウルトラマン』の、“差別と排除”をテーマにした伝説の第33話『怪獣使いと少年』(1971年)にも匹敵する70年代トラウマ作品。

劇中、美乳を披露するヒロインの泉じゅんと山内恵美子は、いまで言えば、綾瀬はるかと堀北真希級にカワイイ!(←執筆時2007年の目で感じた戯言)

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 悪霊と書いて“たたり”と読む。1970年代のオカルト映画ブームが生んだ異形の怪作『犬神の悪霊』は、なかなか目にすることができず、好事家のあいだで語り継がれてきた“封印作品”だ。

 要約すれば“犬神憑き”を理由に迫害され、惨殺されてしまう一家の怨念話。

 ところが2006年、都内の名画座で久方ぶりに上映され、翌年、ついにDVD化もされて完全解禁! 早速観てみるとこれが面白く……それでいてやはりディープな味わいのある映画だった。

 ウラン鉱の調査技師(大和田伸也)とその仲間がジープで山奥の古びた祠を壊し、一匹の犬を轢き殺したことから怪異譚が始まるのだが、“犬神憑き”として忌み嫌われ、村外れへと追いやられている一家への酷い仕打ちに映画はフォーカスを当てていく。

 この被差別民に関する描写で“封印作品”となってしまったのだろうが、差別と排除の問題、暴徒と化す世人の怖さは、プチ『ホテル・ルワンダ』(2004)のような趣きだ。

館理人
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『ホテル・ルワンダ』は1994年のルワンダ虐殺での難民をかくまったホテルマンの実話を描いています。

 そして、声を大にして言いたいのが大和田伸也のすごさ。深夜テレビ「環境野郎Dチーム」でも常軌を逸していたが、本作では不条理な出来事の連続にギョロ目をかっ開いて、わめき、狂気の淵でのたうち回る!

館理人
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「環境野郎Dチーム」は2007年に放映された、環境問題を主に扱うフジテレビの深夜情報バラエティ番組。

 公開時、儀式の場面で生き埋めにした犬(本物)の首(こちらは作り物)を刎ねるシーンが、動物愛護団体から抗議を受けたという。

 今だと、チープな描写もけっこう目立つ。だが、元祖『さそり』シリーズの伊藤俊也監督の直球勝負が胸に響き、ラスト、野焼きにされながらの大和田伸也の鬼気迫る形相は、さながら本作を封印しようとしていたものに対しての異議申し立てのようで、ちょいと感動的ですらあった。

轟

週刊SPA!2007年7月17日号掲載記事を改訂!