読む映画リバイバル『キンキーブーツ』

脚と靴による官能イメージ、痛快なまでの人生逆転劇が“フィット”したドタバタ劇

(2007年2月20日号発売)

 脚と靴との関係は、どこかエロティックだ。つまり、凸と凹との遭遇をイメージさせるがゆえに。あのシンデレラの物語だって、性的隠喩が含まれているのは明白だろう。

 で、直訳すれば“倒錯的な、変態ブーツ”なんてタイトルを持つこの『キンキーブーツ』。隠喩どころかダイレクトに、“脚と靴の性的イメージ”を活用した映画になっているわけだが、面白いのは入り口はそうでも、中身は『ブラス!』『フル・モンティ』系の、笑えてジンとくるUK産人生コメディなのであった。

 主人公は、父親の急死で靴工場を継いだ青年。伝統ある家業だが、実は経営はジリ貧に追い込まれていて大ピンチ。そこで起死回生の策として、ドラァグクイーン用ブーツを作り始めるという展開は何だか奇抜すぎるけど、ちゃんとモデルは存在する(=スティーブ・ベイトマン)。

 1枚の革から、まるで生き物のように息を吹き込まれていく真っ赤なブーツ。英国の田舎町を舞台に、エナメルにスーパーヒールの新商品をめぐるドタバタ劇は、性的表現を超えて、セクシュアリティの問題、ひいては人生の選択というテーマにまで辿り着く。脚と靴、さらには一発逆転劇の組み合わせが意外性を醸し、凸と凹の“フィット感”が実にいい。

 そして“フィット感”といえば挿入音楽の素晴らしさ。JB(遅ればせながら追悼!)の「マンズ・マンズ・ワールド」が、ナンシー・シナトラの「ディーズ・ブーツ・ア・メイド・フォー・ウォーキン」(邦題「にくい貴方」)が適材適所に! ここでも凸と凹の感度は抜群なのである。

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家業の生き残りをかけ、新商品開発に乗り出す倒産目前の靴工場の再生を描いたハートフルコメディ。100年の伝統を誇るノーサンプトンの伝統的な製靴業者、スティーブ・ベイトマンの実話が基になっている。工場の再生に関わるドラァグクイーン役、キウェテル・イジョフォーの好演も見逃せない。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジュリアン・ジャロルド●出演:ジェエル・エドガートン、他●2005年●イギリス