読む映画リバイバル『テキサス・チェーンソー ビギニング』

殺人鬼レザーフェイスよりも強烈! リー・アーメイの軍曹ぶりは健在だ

(2007年4月3日発売号より)

 初めてトビー・フーパー監督の『悪魔のいけにえ』(’74年)と出会ったときのことは忘れられない。’80年代初頭、渋谷の雑居ビルの一室の有料ビデオ上映(輸入版)で観たのだが、秘密集会のごとき雰囲気と作品の異様さが合わさり、したたかノックアウトされたものだった。

 あれから殺人鬼レザーフェイスとも長い付き合いになる。いくつかの続編が作られたが、’03年には『悪魔のいけにえ』がジェシカ・ビール主演で『テキサス・チェーンソー』としてリメイクされた。本作はその前日譚。人の皮をつなぎ合わせたマスクをかぶり、チェーンソーを振り回す殺人鬼はいかにして産まれ、異常な人格へと育っていったのか。映画は彼が出生した’39年に始まり、決定的な出来事が起こった’69年の数日間を白日のもとに晒していく。

 ……のだが、ところがこれ、『テキサス・チェーンソー』の強烈キャラ、R・リー・アーメイ扮するホイト保安官の誕生の映画でもあったのだ! 農民だった彼はいかにして保安官になりすまし、イカレ三昧を繰り返すようになったのか?彼の餌食となった若者たちを待ち受ける阿鼻叫喚、地獄の世界。だがどこか、滑稽なのはアーメイがかつての当たり役、『フルメタル・ジャケット』のキャラばりに鬼軍曹化し暴走するため。若造には突如「腕立て伏せ、10回!」と怒鳴り、一家の長老、モンティ叔父さんが片足を撃たれれば、「バランスが大事!」と両足切断をレザーフェイスに命じる。つまり本作で一番怖くて面白いのは、ホイト=アーメイ軍曹の存在。人を喰い、主役までも食ってしまった。

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マスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されている『悪魔のいけにえ』のリメイク、『テキサス・チェーンソー』の“以前の物語”。劇場公開版より約5分長いアンレイテッド版。製作者マイケル・ベイほかスタッフ&キャスト総登場のメイキングもも見ごたえ十分。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジョナサン・リーベスマン●出演:アンドリュー・ブリニアースキー、他●2006年●アメリカ