読む映画リバイバル〈『仁義なき戦い』シリーズは邦画史に残る男たちの群像劇〉

(2000年11月号より)

 暴力と抗争。裏切りと報復。『仁義なき戦い』シリーズといえば、即座にそんなイメージが浮かびあがってくるだろう。

 まあ、たしかにそれはそうなのだ。’73年に公開されるや大ヒットを記録。’74年にかけて連打されたシリーズ5作は、戦後の広島やくざ抗争をリアルに描いたものだった。主人公は菅原文太演じる広能昌三。モデルは、原作のネタとなる獄中手記を綴った元組長の美能幸三だ。監督は深作欣二。得意のドキュメンタリータッチの手持ちカメラで路上を走りまわり、人が死ぬや、ストップモーションで「広能組組員○○射殺」なんてテロップをぶちこむカッコよさ! ノーレフ、ノーライトのザラザラとした画面は、パンキッシュな輝きを発していた。

 「男のハーレクイン・ロマンス」とも呼ばれる当シリーズだが、しかし狂暴な“殺しあい”のイメージのみで語るのは木を見て森を見ないのと同じだ。登場人物たちは欲と保身のためにはナリフリかまわぬ行動に出る。そして意外にも、手より口のほうがよく回る。たとえば「週刊文春」の“20世紀の日本映画ベスト100”で、当シリーズを選んだ作家の小林信彦氏はこう書いている。「笠原和夫(注・脚本担当)が描く〈ずっこけ人間喜劇〉。特に3部の『代理戦争』はドンパチがないのに、むちゃくちゃ面白い」。阪本順治監督(『新・仁義なき戦い。』)も「やくざの世界をのぞく楽しさというより、人間のナマっぽい部分、ずるかしこさもカッコ悪さもすべてが露呈されてしまう部分が魅力的」と語っていた。

 つまり、原爆投下直後の、下克上状態となった広島を舞台にした“集団群像劇”こそが映画のキモなのだ。それは設定が変わっても、’74〜’76年に作られた姉妹編『新・仁義なき戦い』シリーズ3本、工藤栄一監督による、’79年の番外編『その後の仁義なき戦い』にも引き継がれていよう。

 小ずるい組長を巧みに演じた金子信雄、梅宮辰夫、松方弘樹、小林旭、千葉真一、川谷拓三……主人公は文太なのに彼らは登場するたびに強烈なインパクトを残していった。脇役まで含め全員が“主役”の群像劇。いわばやくざ版の『ER』! 当シリーズはそんな面白さを持っている。

[月刊スカイパーフェクTV!掲載]

『仁義なき戦い』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1973年●日本

『仁義なき戦い・広島死闘篇』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1973年●日本

『仁義なき戦い・代理戦争』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1973年●日本

『仁義なき戦い・頂上作戦』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1974年●日本

『仁義なき戦い・完結篇』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1974年●日本

『新・仁義なき戦い』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1974年●日本

『新・仁義なき戦い・組長の首』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1975年●日本

『新・仁義なき戦い・組長最後の日』●監督:深作欣二●出演:菅原文太、他●1976年●日本

『その後の仁義なき戦い』●監督:工藤栄一●出演:根津甚八、他●1979年●日本

『新・仁義なき戦い。』●監督:阪本順治●出演:豊川悦司、他●2000年●日本

『新・仁義なき戦い/謀殺』●監督:橋本一●出演:豊川悦司、他●2003年●日本