読む映画リバイバル〈『学校』シリーズを振り返る〉

俳優、映画ファンにとってのすばらしい“課外授業”シリーズ

(2000年11月号より)

 山田洋次監督の『学校』シリーズは、タイトルこそシンプルだが、中身のほうはとても滋味深い。何しろ「寅さん」と長年並走してきた山田監督である。さまざまな教育現場に目を向けつつ当シリーズは、教室を飛び出し、いたるところに転がっている人生の“課外授業”を毎回映しだしてみせてきた。

 ‘93年に発表された『学校』は、東京下町の夜間中学をステージとした、教師(西田敏行、竹下景子)と生徒たちとの物語。これは『男はつらいよ』を連作しながら、山田監督が企画を温め、15年の月日を待って結実させた映画であった。萩原聖人、裕木奈江、中江有里、神戸浩らが演じた、働く学生たちのそれぞれのエピソード。さらには夜間中学に通うまで読み書きができなかった初老男(田中邦衛)の人生の機微をフィーチャーし、「幸福とは何か」という大テーマにも肉薄。まさに渾身の1作となった(渥美清、特別出演!)。

 続く’95年の『学校II』では、北海道の高等養護学校に舞台を移し、知的障害をもつ9人の生徒と先生(西田敏行、永瀬正敏、いしだあゆみ)との心の触れあいを描いた。ここで“課外授業”に繰り出すのは、生徒役の吉岡秀隆と神戸浩。彼らは無断外出し、「安室奈美恵withスーパーモンキーズ(現MAX)」のライブへと向かう。公開時にはあまりにタイムリー過ぎたこの設定も、今となってはイイ感じ。ちなみに西田敏行の娘役に扮していたのは何と浜崎あゆみ。劇中、「ミュージシャンになりたい」と台詞を言うのが驚きである。彼女が歌手デビューしたのは’98年のことなのだ。生徒役の中には『がんばっていきまっしょい』『バレット・バレエ』の気鋭の女優・真野きりなの顔も……恐るべし、山田洋次!

そして’98年『学校III』。山田監督はNHKのドキュメンタリー番組で職業訓練校の存在を知り、中高年者の再生のドラマを世に問うことになる。夫を過労死で亡くし、障害を持つ息子(黒田勇樹)を女手ひとつで育てているヒロイン(大竹しのぶ)と、リストラされた大手証券会社の元部長(小林稔侍)の、再出発のためのレッスン。職業訓練校という設定自体が人生の“課外授業”といえるだろう。

 ところで最新作『15才 学校IV』は、旅の映画であり、コレまさに全編“課外授業”の構成となったわけだが、ここで「キネマ旬報」を繙いてみると、当シリーズの魅力を解くこんな証言があった。すなわち『息子』(91)に引き続き『学校II』に出演した永瀬正敏は、「山田監督という校長先生のもとで自分も3年間、学校で生活してきたような感じになりましてね」と語っており、『男はつらいよ・寅次郎頑張れ!』(77)以来21年ぶりの大竹しのぶも『学校III』撮影中には、「毎日学校に通っているみたいです」との感想を残していた。つまりは、山田洋次“映画”学校!

 なるほど、そうやって生みだされた作品が観客に届くとき、映画が、さらには映画館が“学校”そのものとなっているわけである。

[月刊スカイパーフェクTV!掲載]

『学校』●監督:山田洋次●出演:西田敏行、竹下景子、萩原聖人、他●1993年●日本

『学校II』●監督:山田洋次●出演:西田敏行、吉岡秀隆、永瀬正敏、他●1996年●日本

『学校III』●監督:山田洋次●出演:大竹しのぶ、小林稔侍、黒田勇樹、他●1998年●日本

『十五才 学校IV』●監督:山田洋次●出演:金井勇太、麻実れい、赤井英和、他●2000年●日本