読む映画リバイバル『女ざかり』

〜私の選ぶ吉永小百合映画、この1本〜

(2005年2月上旬号より)

 好きな小百合映画は60年代の日活時代に集中している。完成度に関しても。

 だがここは目先を変え、あえて近年の作品から選んでみたい。すると浮上してくるのが「あなたのシワを撮りたい」との大林宣彦監督のラブコールに応え、吉永小百合がノーメイクに近いナチュラルメイクで挑んだ『女ざかり』。あの『理由』(04年)を生んだプレ映画と捉えると、テーマ性も含め、公開当時より受け入れられるのではないか。

 振り返れば『女ざかり』は、丸谷才一のベストセラー小説を映像化する試みであるのと同時に、大林監督の日活映画のリ・イマジネーションであった。短いカットつなぎによるハイテンポは、早口でまくしたてる日活映画「(特に中平康監督作品)の専売特許でもあったはずだ。また、底流にセックスのモチーフが横たわっている点も。三國連太郎、山崎努、津川雅彦といった豪華客演、さらに水の江瀧子、宍戸錠、白木万理、月丘夢路といった古巣ゆかりの面々にも囲まれて、吉永小百合は日活映画の現代的再生を生きてみせた。

 現代的再生とは、彼女が年齢を重ねて働く女を極め、しかも欲望に忠実な“食べる女”であったこと(劇中、実にさまざまなものを口にする!)。役柄はこうである。新聞社の家庭部副部長から論説委員に移るも、最初に書いた一文が政府与党と密接な宗教団体を刺激し、不当に異動させられそうになる。論説委員=小百合は、男たちに向かって真っ直ぐな言葉をぶつける。しかし魑魅魍魎が跋扈するドロドロとした現実の中で、言葉は宙に浮く。それを遮二無二、行動で突破しようとするのが日活映画の伝統だ――。

 『理由』を締め括ったルポライター役、吉永小百合が演じたら、さぞ面白かったろうなあ。

[キネマ旬報掲載]
●監督:大林宣彦●出演:吉永小百合、津川雅彦、風間杜夫、他●1994年●日本