読む映画リバイバル『フル・モンティ』

(1998年3月上旬号より)

失業中で身も心もドツボ状態の野郎6人が一念発起。なんと雁(カリ!?)首揃えて男性ストリップに挑んじゃうてな痛快作。

その出会いから、思わず拍手喝采の〈スッポンポン〉ショーへと至るプロセスは、踏んだり蹴ったりな“現実”を映しだしつつ、一方で「バンド結成映画」の味わいにも似た絶頂感を描きだしていく。紆余曲折に満ちた、サエねえ野郎どものエピソードのひとつひとつが、ラスト(のライブ)に向かってハーモニーを醸し出すように積み重なっていくのが、何とも楽しいのだ。

とりわけ可笑しいエピソードを挙げるなら、それまで踊りのタイミングがちっともつかめなかった彼らが、コーチの「オフサイド・トラップの要領で!」の一言でコツを飲み込むところ。イギリスはいにしえの鉄鋼業の町シェフィールドが映画の舞台で、サッカーのチームが2つもあるという場所柄だ。カラダのすみずみまで“オフサイド”の感覚が、すっかり染みわたってしまっているのが微笑ましい。

しかし考えてみるとだ、この“オフサイド”を知っているか否かで、人生というやつも随分と変わってくるのではないか?

いや、サッカーが楽しめないとかそういうことではなくって。

「敵よりも前に出て、ボールを受け、シュートしてはいけない」

これがめちゃくちゃ要約した“オフサイド”のルールである。つまり、戦列から離れてプレーするのは卑怯者、というジェントルマンの国ならではの騎士道精神のあらわれだ。その際重要なのは、転がるボールにつれて選手は動き、また“オフサイド”のラインも常に動いている点。まさしくサッカーとはこの見えない〈オフサイド・ライン〉上にて交わされる攻防戦なのだ。

しかし攻める側はいい。この「フル・モンティ」の野郎6人のように、守勢に回ってばかりいる奴らはどうすればいいのか。そこで“オフサイド・トラップ”である。守備陣の、意思統一により(見えない)ラインを上げ下げし、文字通り“罠”を張る。それはリスキーだが、守備陣の最強の武器でもあるのだ。

人生の攻防――すなわち人生の“オフサイド”をめぐる攻防。女の時代の裏を掻く、男性ストリップにそれを見た。

[キネマ旬報掲載]
●監督:ピーター・カッタネオ●出演:ロバート・カーライル、 トム・ウィルキンソン、他●1997年●イギリス