読む映画リバイバル『トーク・レディオ』

毒舌パーソナリティvs心を病んだリスナー。“匿名の大衆”の恐ろしさは現代に通じる

(2007年5月22日号より)

 時がたつと、“名作”と呼ばれている映画でも色褪せてしまうことがある。またその反対に、公開時よりもだんだんと味わいが増してくる場合もある。初DVD化、このオリバー・ストーン監督の『トーク・レディオ』は後者だ。

 本国アメリカでは88年に封切られ、監督ストーンのキャリア的に見れば『ウォール街』と『7月4日に生まれて』のあいだに挟まっている小品。俳優エリック・ボゴジアンの自作自演の舞台劇の映画化で、当初のプロジェクトでは、エイドリアン・ライン、ウィリアム・フリードキン、アラン・パーカーなどの監督が候補に。最終的には当時上げ潮のストーンがボゴジアンの書いたシナリオをリライトし、演出も手がけた。

 ラジオ局のブースが中心の密室劇だが、ボゴジアン扮する人気DJは電話をかけてくるイカレたリスナー相手に喋りまくる。キャメラは縦横無尽、360度パンまで繰り出して観る者の緊張感を煽る。撮影は『アビエイター』『キル・ビル』のロバート・リチャードソン。80〜90年代ストーン作品の“守護神”でもある。

 次から次へダラダラと、ドーでもいい話、病んだ悩みを垂れ流すリスナーたち。対して毒舌と罵詈雑言で対抗するDJバリー。相手の中にはネオ・ナチ野郎、レイプ魔も。顔の見えない“大衆という匿名的存在”の恐ろしさ。そこでの言葉の応酬は、何と現在のネット社会のある側面となんと似ていることだろう。もしかして予見の映画? いや、それだけ我らの心根が変わらないのだ。ストーン作品が苦手な人にこそ観てもらいたい。

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地方局ラジオの深夜放送“ナイト・トーク”。DJのバリーは、聴視者の些細な悩み、ドラッグ、セックス、人種問題などタブーなネタに過激なコメントをつけ、人気を呼んでいた。番組の全国放送が決定するか否かの夜、事件が……。音楽は元ポリスのスチュワート・コープランド。主演エリック・ボゴジアンはベルリン国際映画祭独創性貢献賞を受賞。

[週刊SPA!掲載]
●監督:オリバー・ストーン●出演:エリック・ボゴジアン、アレック・ボールドウィン、他●1988年●アメリカ