読む映画リバイバル『12人の怒れる男』(ロシアリメイク版)

少年を裁く陪審員たちの重厚なディスカッション・ドラマ

(2009年1月20日号より)

 往年の名作のリメイクに挑戦するも、あえなく討ち死にしてしまうケースというのはもう、お馴染みのことだが、この映画は違った。’57年製作、主演ヘンリー・フォンダ、監督シドニー・ルメットによる“ディスカッション・ドラマ”のお手本の、ロシア版リメイクである。

 殺人の罪で被告となったひとりの少年の評決のため、12人の陪審員の男たちが集められるシチュエーションは全く同じ。ただし、舞台は狭い陪審員室ではなく、学校の体育館に変えられている。密室性を強調していたオリジナルに対し、空間的な広がりを持ったわけだが、それだけでなく、「作品のテーマに添ってのアレンジ」だということが明らかにされていくのでお楽しみを。

 おっと、作品のテーマ、なんて書くと、たちまち観る気が失せるかもしれないので別視点から本作の魅力を語ろう。陪審員は、無罪側と有罪側に分かれる。全員一致の結論に達するまで、議論は延々と繰り返される。映画の成功は、いかにこの言い合いを面白くできるかどうかにかかっている。ではどうしたか。少年の事件を通じ、いろんな立場境遇の男たちに“自分語り”をさせて、そうして全編を、ある種の「すべらない話」を競いあう場にしてしまったのだ。

もちろんそれはゲラゲラと笑えるものではない。作品のテーマはざっくり言えば、劇中の台詞に出てくる「路上より刑務所のほうが長生きできる国」への批判なのだから。

 何はともあれ、重厚なディスカッション・ドラマを心おきなく楽しみたい方へ。吹替え版をオススメしておく。

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チェチェン人の少年がロシア軍将校だった養父を殺害した罪で裁判にかけられる。目撃者もおり、容疑は明白。任意に選ばれた陪審員たちも審議は容易に終わると思っていたが、コトはそう簡単ではなかった! ちなみに陪審員 2番役で登場している男こそが本作の監督、ロシア映画の巨匠ニキータ・ミハルコフその人。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ニキータ・ミハルコフ●出演:セルゲイ・マコヴェツキ、他●2007年●ロシア