読む映画リバイバル『ヒルズ・ハブ・アイズ』

オリジナル同様に“封印”されかけた傑作ホラー。日本でこそ評価されるべき

(2008年5月13日号より)

  すでに承知のことかもしれないが、日本では一時“封印作品”になりかけた映画である。登場する人食いミュータントが、アメリカ政府による“核実験の被爆者”との設定だったため、「もしかしてタブーに触れているのでは?」と映画会社が自粛的にオクラ入りさせていたのだ。

 しかし、海外で絶賛されていた本作は配給会社を替え、無事国内でも公開された(レイトショーだったが)。映画はホラーファンを中心に好評価を得た。トラブルは起きなかった。当たり前だが、何事も世に問うてみないと真価は分からないのである。

 かつての政府の核実験場、ニューメキシコの荒野で、食人一家に襲われる家族の受難劇。オリジナル版の『サランドラ』(ちなみにこのタイトルは和製)をリスペクトし、ディテールや展開は本家を忠実になぞっている。が、オープニングは決定的に違う。冒頭、本物の核実験フィルムや奇形児たちの映像が流れる。付随してミュータント家族の特殊メイクもリアルになり、オリジナルより“犠牲者”として強調されている。

 アメリカを象徴する2つのファミリーを出会わせ、凄まじい対決を描きだしたアレクサンドル・アジャ監督はフランス人ゆえ、残酷描写も容赦なく「アメリカ批判」を画にしていく。しかもサバイバル・スリラーとしてジョン・ブアマンの傑作『脱出』を目指していたというから志しが高い。内外の映画人に「リメイクはこうすべし」と突き付ける、鑑のような作品。我ら『ゴジラ』を生んだ国の住人ならば、このエンタメ性と問題意識はきっと共有できるはずだ。

※ ※ ※ ※ ※

『エルム街の悪夢』や『スクリーム』などで知られるホラーマスター、ウェス・クレイヴン監督が77年(日本公開は84年)に発表したカルト映画『サランドラ』のリメイク。本作を手がけたのは、『ハイテンション』の手腕を買われ、ウェス・クレイヴンにより抜擢されたアレクサンドル・アジャ監督。これがハリウッド・デビュー作となる。

[週刊SPA!掲載]
●監督:アレクサンドル・アジャ●出演:アーロン・スタンフォード、他●2006年●アメリカ