読む映画リバイバル『刑事物語』

ヌンチャクを手にした鉄矢は誰にも止められない!!

(2009年9月15日号より)

 人に歴史あり。かつて武田鉄矢は、日本を代表する“格闘技スター”であった。まあ’80年代の彼を知る者にとってはわりと、常識ではあるのだが、もしも信じられない方は、’82年の主演作『刑事物語』を観てみるがいい(初DVD化!)。一旦スイッチが入ってしまうと凶暴な、リーサル・ウェポンと化す片山刑事役での雄姿。ぜひ目の当たりにし、後世に語り継いでもらいたい。

 犯人が女性を人質に立て篭もった銀行、はたまた、売春組織が出入りしているトルコ風呂(現・ソープランド)にて、武田鉄矢=片山刑事は、「ハァ〜イ!!」と奇声を発しながら中国拳法、蟷螂拳(とうろうけん)を駆使して相手をボッコボコにしていく。彼は撮影前に、中国武術の大家・松田隆智氏に指導を受けて、本作に挑んだ。なかでも特筆モノなのはクリーニング工場でのアクションで、工場に(用意して)あった木製ハンガーを巧みに振り回して敵を痛打。これぞ鉄矢自らが考案した“ハンガーヌンチャク”だ。

 動きのひとつひとつに「ヒュ〜ン」「ブォ〜ン」と効果音が響く。彼の肉体にはジャッキー・チェンが降臨しているかのよう。突如上着を脱ぎ、「ンガァ〜」と哮える場面は、さすがに「鉄矢、なんばしよっと」と思うが、次第にブルース・リーまでもが降りてきた気がする……恐るべし。

 といっても、むやみやたらと暴れ回っている映画ではない。博多署から転勤を命じられ、静岡県南沼津署に赴任。連続殺人事件の捜査に加わっての巨大売春ルート潰し。金八先生が「このバカチンが!」と怒って済む話ではなく、堪忍袋の尾が切れて、片山刑事はバイオレンスに走る。もちろん、武田鉄矢おなじみの“対話と説得の名シーン”も満載で、何度となく涙腺を刺激されることだろう。

 筆者は今から10数年前、インタビューの場で、彼に「青年よ。男と女、身も心も本当に感じ合えるセックスなんて生涯に数回だぞ」と諭されたことも。スゴかったですよ、ナマ鉄矢。でもこの『刑事物語』の数々の“鉄矢節”のインパクトには及ばず。ぜひコチラのほうも後世まで、語り継いでいきたいものである。

※ ※ ※ ※ ※

“片山蒼”名義で原作を書いた武田鉄矢が、脚本、主演も兼ねた全5作(’82〜’87年)あるシリーズの第1弾。聾唖の風俗嬢の身柄を引き取り、静岡へと向かった片山刑事の奮闘ぶりを描く。共演は田中邦衛、西田敏行ら豪華キャストで、カメオ出演の高倉健は、『駅STATION』(’81年)での刑事役のパロディ。エンディングテーマは吉田拓郎の名曲「唇をかみしめて」。

[週刊SPA!掲載]
●監督:渡邊祐介●出演:武田鉄矢、田中邦衛、西田敏行、他●1982年●日本