読む映画リバイバル『赤い風船』『白い馬』

あの“風船おじさん”も観ていた傑作。『フランダースの犬』級の感動が涙を誘う

(2008年12月16日号より)

  君は“風船おじさん”の冒険を覚えているか? 昔(1992年のこと)、風船を26個つけたゴンドラに乗って太平洋を横断しようとし、消息不明になった人。本名は鈴木嘉和というのだが、その風船おじさんも観ていたという傑作『赤い風船』が、ついにDVDになる。

 ある日、少年が赤い風船と出会って仲良しに。基本はそれだけの物語。しかし面白い。フワフワと浮き、まるで生きているかのように躍動する風船。CGなんてまだない時代。少年との交流を手作りで描き、“シネポエム”の称号にふさわしい、素晴らしい映像詩を見せてくれる。劇中、セリフは皆無に等しいが、無問題!

 少年のあとを追いかけ、離れない風船のけなげさが泣かせる。そういう意味では、『ドラえもん』も『崖の上のポニョ』もみんな、本作を追随しているといっても過言ではないだろう。慈悲の極致とも呼べるラストは、あの『フランダースの犬』級で、どんなスレッカラシも落涙必至だ。1956年カンヌ国際映画祭にて短編部門パルムドールに、また、アカデミー賞の脚本賞にも輝いている。

 アルベール・ラモリス監督はほかにも『素晴らしい風船旅行』『フィフィ大空を行く』など空を愛し続けた作家だが、1970年にイランで『恋人たちの風』撮影中にヘリコプター事故で亡くなった。ゴンドラを「ファンタジー号」と名付けた風船おじさんともども、現実のエピソードは何とも切ないが、この『赤い風船』は夢見ることの愉しさ、ファンタジーの神髄を、時を超えて伝えてゆくだろう。

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永遠の“シネポエム”『赤い風船』が、少年と野性の白馬との神々しいまでの絆を描いた傑作『白い馬』とともに、デジタルリマスターで甦る。ちなみに『赤い風船』は、キャメロン・クロウ監督も大ファンで、『バニラ・スカイ』のラストのフラッシュバックにてワンカット、劇中のシーンを挿入している。

[週刊SPA!掲載]
『赤い風船』●監督:アルベール・ラモリス●出演:パスカル・ラモリス、シュザンヌ・クルーティエ、他●1956年●フランス
『白い馬』●監督:アルベール・ラモリス●出演:アラン・エムリイ、パスカル・ラモリス、他●1953年●フランス