読む映画リバイバル『ハチミツとクローバー』

みうらじゅん氏も!? 過ぎ去りし青春を回想する人こそ、涙が止まらなくなる

(2007年1月2日号より)

 先日、ある企画でみうらじゅんさんを取材していたら、何かの拍子でこの映画『ハチクロ』の話になった。そういえば本作は美大が舞台。みうらさんは武蔵野美大出身だ。聞くところによると、見始めはバカにしていたが、途中の海のシーンでいつの間にか泣いていたという。

 恐るべし『ハチクロ』。言わずと知れた人気コミックの映画化である。美大生男女5人が“全員片思い”の関係で、甘酸っぱくて切ない恋模様が描かれてゆく。ちなみに、海のシーンで5人は波打ち際に並び、何と野郎ふたりが「俺、最高!」「青春、最高!」と叫んじゃう。大学生ならではの、“若気の至り”が全開だ!

 が、こっ恥ずかしさよりも、感傷めいたものがジンジン胸に去来するのはなぜだろう。社会に出て幾年月。それは遠い昔の自分。もう戻れない時間……と、おセンチ気分にさせるのは、映画自体もまた5人に対してある距離をもって接しているからだ。

 そのことは俳優陣の年齢を見てもわかる。蒼井優、関めぐみは20才を過ぎたばかりだから大学生役はジャスト。不器用に生きる竹本役の櫻井翔も24才でまだOK。だが年上の女性に惹かれるメガネ男子・真山に扮した加瀬亮は32才。天才美大生・森田を演じた伊勢谷友介は、完成披露会見の場で「私、30才になるんですけど、作品では恥ずかしながら青春全開させていただきました」とコメントしていた。

 つまりこれは「過ぎ去りし者の目から回想された青春」。だから“若気の至り”も許せてしまうのだ。海のシーンで、みうらさんが泣いたというのも、よくわかる気がした。

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800万部を突破した羽海野チカの手による超人気コミックを実写映画化。将来のあてもなく美大に通う男女5人の甘酸っぱい恋模様を爽やかに描いたラブストーリー。アニメ版、映画版合わせて、「ハチクロ」はちょっとした社会現象になった。

[週刊SPA!掲載]
●監督:高田雅博●出演:蒼井優、関めぐみ、櫻井翔、加瀬亮、伊勢谷友介、他●2006年●日本