読む映画リバイバル『ミスト』

迫り来るモンスターよりも残忍で、かつ怖いのは、不信感に満ちた人間だ!

(2008年9月23日号より)

 田舎町。のどかなスーパーマーケット。そこに突如、異変が起こる。外がみるみるうちに霧で包まれ、視界の全てを奪っていく。

 白い恐怖。スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督による『ミスト』は霧の向こう側に潜む、得体の知れない“白い恐怖”を描いている。危険を察知し、スーパーマーケットの中に閉じこもった人たち。その恐怖の正体は造形的にはモンスター、蛸の足のような巨大な触手を持つもの、口から酸性の糸を吐くもの、昆虫のごとく羽で飛び回るものなど、次第に具体化してくる。

 だが、なぜこんな状況になってしまったのかという点に関しては、疑問の霧は晴れず、密室化したスーパーマーケットではパニクった人々が、互いをモンスター扱いし始める。

 中でも神の意に背く者たちを罵倒し、聖書を片手に扇動しまくる狂信的な女(マーシャ・ゲイ・ハーデン、見もの!)はヤバく、店内に侵入し殺戮しまくる昆虫系モンスター以上に厄介な存在だ。映画は密室劇の典型、人間のモンスター性を突いたオーソドックスな展開ながら、クリーチャー好きなダラボン監督のグロ演出と“白い恐怖”の謎でジラし引っ張り、最後まで緊迫感たっぷりに進行してゆく。

 問題は、原作者キングも称賛した映画版のオリジナル・エンディング。これが「衝撃のラスト」と喧伝され過ぎ、ハードルが上がり、もはや衝撃であることは難しいのだが、一人で観るのはやめたほうがいい。できれば誰かと賛否を議論したい。そうすれば、本作に流れる陰鬱な空気を体験できるだろう。

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スティーブン・キングの小説『霧』の映画化。監督はキングの原作では『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』などを映画化してきたフランク・ダラボンだが、本作は彼が脚本を手がけた『ブロブ/宇宙からの不明物体』テイストも。ちなみにキングは「ラスト15分について口外した者、絞首刑に処す!」という新聞広告を出すべきだと述べている。

[週刊SPA!掲載]
●監督:フランク・ダラボン●出演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、他●2007年●アメリカ