読む映画リバイバル『カラテ愚連隊』

2丁拳銃もなければハトも飛ばない。でもそこには“ジョン・ウー印”の「義」がある

(2008年10月21日号より)

 先日、ジョン・ウー監督に取材する機会を得た。11月に封切られる最新作、100億円もの巨費を投じた『レッドクリフ』のキャンペーンで来日したのだった。

 実物のウー監督は恰幅よく貫録もたっぷりだったが、気軽に「ウーさん」と呼びかけたくなるほどフランクな人柄で感動した。もし事前に、監督デビュー作であるこの『カラテ愚連隊』を観ていたら、話題に出して質問もしていたことだろう。惜しかった。何しろ本作は、今回初ソフト化されたレア作。1970年代カンフーブームの最中に作られた1本だが、まさしくウー映画の原点なのだ。

 なるほど、デビュー作にはその監督の本質が映っているという。本作には、名物の2丁拳銃は登場しないし、白いハトも飛ばないが、しっかりとジョン・ウー美学が刻まれている。それを一言で記せば「義」。男と男の、尋常ではない絆。たった一度の出会い、しかもカンフー勝負で腕を認めあった相手のために、愚連隊のチェン(ユー・ヤン)は巨悪に挑み、「義」に殉じる。ラスト、敵の用心棒との壮絶バトル。雌雄を決した後に挿入される、落ち葉のスローモーション・ショット。これぞウー印の原型である。

 ちなみに、当時“陳元龍”の名で活動していた若きジャッキー・チェンが武術指導を担当、ウー監督は主人公の窮地を警察に伝えにいく手下役で一瞬顔を見せている。その痩せた、貫録ゼロの姿を瞼に焼き付けておこう。そうして、私財10億円を投入した、やはり男と男の「義」が沁みる『レッドクリフ』を観よう。感慨はまた別格だと思う。

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銃の密輸で私腹を肥やす悪党一味。そのブツを横取りした愚連隊の数奇な運命を描いたカンフーアクション。1973年、『過客』として製作されたが過激な描写ゆえ上映禁止となり、ゴールデン・ハーベスト社が買い切り再編集。1975年に『鐡漢柔情』と改題され公開された。フォン・ハックオン扮する用心棒が、登場場面で鳥カゴを手にしているなど“ウー印”をいろいろ探したい。

[週刊SPA!掲載]
●監督:ジョン・ウー●出演:ユー・ヤン、ティエン・ニー、ウー・チン、他●1975年●香港