読む映画リバイバル『河童のクゥと夏休み』

現代を生きられない河童=マイノリティ。「クレしん」原監督による“大人泣き”アニメ

(2008年6月10日号より)

 その鳴き声から、「クゥ」と名づけられた河童の子供と少年の物語。原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』は、一見、子供向きではあるが、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』に匹敵する原ワールド満載の“大人泣きアニメ”だ。つまり、大人のほうがより“心に痛い”描写が、要所要所に埋め込まれているのである。

 原作の児童文学と出会って、かれこれ20年間、原監督はアニメ化を温めてきた。そもそもは「江戸時代に生きていた子供の河童が現代に蘇る」というアイディアに魅かれたのだそうだが、原作者の了解を得て、多くのアレンジを加えた。一体どう変えたのか? 少年とその家族との交流を描きながら、合わせて「河童が現代の人間と共存することの難しさ」も、トコトン描いているのだ。

 この作品のザラついた感触、どこかで味わったことがあると思ったら、少年の名が“上原康一”であることからこんな連想が働いた。これは原監督版の「怪獣使いと少年」ではないのか、と。

「怪獣使いと少年」とは、かの『帰ってきたウルトラマン』の第33話で、怪獣をマイノリティの民族に見立て、被差別問題を扱った回だった。脚本は沖縄出身の上原正三。原監督は河童を妖怪というより少数民族的なものとしてイメージしていたという。しかも劇中、沖縄を重要な舞台として出しているのだから、何らかの関係があったのでは?

 ともあれ、「怪獣使いと少年」は、大人になって観直すと、一層その深さに気づかされる傑作だ。『河童のクゥと夏休み』もまた然りである。

※ ※ ※ ※ ※

フシギな石を拾った小学生と、石から甦った河童の子供の交流を描いた、号泣必死の感動アニメ。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』以来5年ぶりとなる、原恵一監督作。原作は、故・木暮正夫の児童文学『かっぱ大さわぎ』(1978年)と『かっぱびっくり旅』(1980年)。

[週刊SPA!掲載]
●監督:原恵一●出演(声):田中直樹、西田尚美、なぎら健壱、他●2007年●日本、アニメ