読む映画リバイバル『(秘)色情めす市場』

再検!日活ロマンポルノ

本当の「聖者の行進」とはこういうものだ!

(1998年6月号より)

 今回はひとつ、本作をめぐる極私的な思い出をザックリと語らせてもらおう。

 いまから10数年前。大学生の頃のことである。つまり80年代の半ば。学園祭の恒例オールナイト上映会のラインアップに、当時俺の所属していた映研はこの映画を潜りこませたのだ。

 すると、ヤツラはすぐにやってきた。クレームと共にやってきた。社会学部のナントカとかいう団体で、ヤツラの言い分はこうだった。

「まずポルノを上映するとはどういうことだ。女性蔑視するな!」
「そしてタイトルの“めす”とは何事だ。女性蔑視するな!」

  上等じゃねえか。俺たちは結束を固め、この頑迷な真のバカどもを粉砕することを誓った。肝心の中身も観ないで文句をつけてくるとはまったく。しかし、実 は観てなくて助かった、とも少し思った。というのも映画には、精神薄弱の青年が出てきて、娼婦であるヒロイン(芹明香)は、その弟のためにSEXしてやる のだ。ヤツラがさらにクレームをつけてくることは間違いない。

 で、何回かの対論が行われた。
 が、すべては平行線のままに終わった。

 この映画の神々しさなど分かるような輩ではない。ヤツラは捨て台詞を残した。
「実力行使してでも上映は阻止しますよ」

 これにはちょっと俺たちもビビった。

 さて、オールナイト当日だーー。

 上映1時間前。とりあえず厳戒態勢を敷くしかないだろう、と会場で相談していると、突然“岡林信康”似で労務者風の男が近づいてきて声をかけられた。

「『(秘)色情めす市場』やるんだって?」

 ええ、と訝しげに答えると、

「アイツらはさ、映画の舞台になってる釜ヶ崎の実態なんか、何にもわかっちゃいねえんだよ。俺はお前らの味方だよ」

 どこの誰? そう訊く間もなく、謎の“岡林信康”は目の前を去って行った。

 映画が始まった。釜ヶ崎というドヤ街とひとりの娼婦の白日夢が交錯する。弟は飛べないニワトリと通天閣に登り、そこに村田英雄の歌がかかり、モノクロはカラー画面に変わる。まるで根本敬漫画をV&Rが映像化したような世界。

 と、そのとき、爆発音が響いた!

 スクリーンの中の出来事だった。自分の女(宮下順子)とヤクザを巻き込み、ガス入りダッチワイフに火をつけて男(萩原朔美)が自爆したのだ!

 結局、ヤツラは来なかった。

 あの“岡林信康”に一喝されたのか。作品を観て考え直したのか。それともハッタリだったのか面倒臭くなったのか……真相はわからない。

 ただ、そんなスリリングな夜にピッタリの映画だったのは、確かだ。

[ビデオボーイ掲載]
●監督:田中登●出演:芹明香、宮下順子、他●1974年●日本